【読書感想】スキマワラシ<恩田陸>

 恩田陸を久々に読んだので、とりとめもないが感想を。
 恩田陸ファンも、ファン以外もぜひ読んでほしい。爽やかなミステリー。

 できるだけネタバレにならないよう気を付けて徒然書きますが、多少はネタバレしちゃうと思うので、ダメな方はここでお控えください。
 一言感想
 なんか恩田陸っぽくなかった。でも、爽やかでなんだか寂しさを感じてしまうところに非常に恩田陸を感じて、面白かった、です。

スキマワラシ あらすじ

スキマワラシ
白いワンピースに、麦わら帽子。 廃ビルに現れる都市伝説の“少女”とは? 古道具店を営む兄と、ときおり古い物に秘められた“記憶”が見える弟。 ある日、ふたりはビルの解体現場で目撃された少女の噂を耳にする。 再開発予定の地方都市を舞台にした、フ...

白いワンピースに、麦わら帽子。
廃ビルに現れる都市伝説の“少女”とは?

古道具店を営む兄と、ときおり古い物に秘められた“記憶”が見える弟。
ある日、ふたりはビルの解体現場で目撃された少女の噂を耳にする。
再開発予定の地方都市を舞台にした、ファンタジックミステリー。

感想

 本作は、主人公である散多さんが独白する形式で進むため、これまでの恩田陸作品とは違った読みごたえがする。急に読者である私に問いかけてきたりするので、最初は読み辛く感じたが、物語が進んでくるにつれ気にならなくなるので恩田陸マジック。

 恩田陸作品といえば、意味深な感じで次から次へと謎が深まっていって、これは残りのページでちゃんと伏線を回収して終わるのだろうか?と読者側が心配するほど畳みかけてきて、最後はなんか作者の力量と勢いで終結に持っていくようなイメージがあるが、本作も同様な感じである。
 各地の解体現場で、主人公たちがスキマワラシと呼ぶ白いワンピースの女の子が目撃される都市伝説と、特殊能力を持った主人公兄弟の生い立ちが絡むんだか絡まないんだかする話なのだが、結局どういうこと?とちょっと思うものの、まあいいか、恩田陸だし、と思わせてくれる。

 それにしても、スキマワラシという都市伝説を創るのがうまい。不気味と怖いと綺麗を絶妙な筆致で描くのでギリギリホラーじゃない感じ。
 出会った人は恐怖を感じないが、後々人に話すと聞いた側のほうは恐怖を感じるというのはまさに都市伝説の醍醐味。途中何回かある描写だが、スキマワラシと目が合ってしまったと感じた後に、こっちに向かってくるという描写は鳥肌が立つほどに怖かった。

 読んだ後、結局恩田陸は何を書きたかったのだろうと思ったが、あとがきを読んで納得。
 エピソードの最後、大変美しい1行があるのだが、あれを読んで寂しくなった。
 最近、ゴジラ、ゲゲゲの謎、トットちゃんと、立て続けに戦前戦後映画を観すぎたせいか、日本がまた美しく立ち上がれるのかなぁ等と感傷的になってしまった。
 あの最後のフレーズだけでこの物語を読んでよかったなと思う。
 ネタバレになるのであんまり言えないが、後半出てくる作品名も、読み終えてみるとこれ以外ない名前だなぁと思う。

 キャラクターとしては、じじむさい兄が好きです。
 古道具屋って定期的に憧れる。この小説を読んで以来、古いものの意匠が気になるようになってしまった。兄の心を捉えた聴診器の引手がみてみたいー。モデルがあるのかしら。
 あと、主人公の名前の由来が明かされたようで明かされていないのが非常に気になる。なぜあの漢字なんだ。鶏が先か卵が先かどうなのか。

コメント

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