本と鍵の季節の読書感想です。
できるだけネタバレしないようにしますが、ちょっとはネタバレしちゃうと思うので、
気にする方はここでお控えください。
一言感想
米澤穂信の書く人が死なない青春ミステリーのちょっとクールな温度感とても好き。
こんな高校生活を送ってみたかった。
本と鍵の季節 あらすじ
堀川次郎、高校二年で図書委員。不人気な図書室で同じ委員会の松倉詩門と当番を務めている。背が高く顔もいい松倉は目立つ存在で、本には縁がなさそうだったが、話してみると快活でよく笑い、ほどよく皮肉屋のいいやつだ。彼と付き合うようになってから、なぜかおかしなことに関わることが増えた。開かずの金庫、テスト問題の窃盗、亡くなった先輩が読んだ最後の本──青春図書室ミステリー開幕!!
感想
米澤穂信が描く文化部系高校生2人のバディもの青春ミステリー。
お人好しの堀川君と、クールで皮肉屋の松倉君の図書委員二人が、日常を多いに外れた事件に巻き込まれ、図書の知識と推理力で解決するというビブリオミステリーでもある。
ビブリア古書堂の事件簿とか、同じ作者であるが、氷菓の読み心地が好きな人なら絶対嵌ると思う。
この作品の素晴らしいと思うところは、探偵が2人いるところ。たいていバディものだと、どちらかがワトソン役になって補佐に回るものだが、本作は短編ごとに探偵役が交代する。
2人とも割とクールでさばさばしているが、似ているようで似ていないため(堀川君がなんだかんだお人好しなところが良い)、お互いの得手不得手をうまく補って話が進んでいく。
2人の会話が積み重なって、解決に導くまでの流れに感嘆する。
また、図書の知識と推理力が高すぎる高校生二人の会話がとてもスマートで、皮肉が効いてて、それでいてインテリぶってなくて非常に読み心地が良い。
読んでいて、自分まで頭が良くなったように錯覚してしまう。
あくまでも高校生活の延長上で事件が発生するので、派手ではないが、すごく練られた上質なミステリーである。
話自体は短編ごとに独立していて読みやすく、それでいて、各章の終わり方がなんだか不穏な感じで、読んでいてあれ?と違和感を覚えるのも良い。最終章を読むとその不穏さも分かってすっきりするので安心してほしい。2人のキャラが立ってるわー。
そんで、一番最後の終わり方がまたずるい。ここで?と誰もが思うんじゃないかな。
米澤作品の中では一番空気感とほろ苦さが好きな作品です。
私は運動部だったので、文化部のちょっと知的なやり取りに憧れる。
事件には巻き込まれたくないが、こんな高校生活を送ってみたかったなーと読むたびに思う。
なお、シリーズ化しているのでまだまだ彼らの青春を読むことができて嬉しい。
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